展覧会キュレーターからのメッセージ

TOKYO 1970 長澤章生

東京という街は、あまりに巨大かつ複雑で、その人の生きた時代、生活環境、そして文化背景によって、同じ場所に立っていても見えている風景はそれぞれでしょう。そして、それらの風景は常に変化し続けているに違いありません。

今回、写真作品を通して「東京」という街を考察するにあたって、その多面性を色濃く表すために、1965年~75年のおよそ10年間という時代に注目し、時代のトリックスターであった寺山修司(演劇実験室“天井桟敷”主宰)を座標軸に据え、それぞれ何らかの形で彼の磁場と引き合う関係にあった有田泰而、沢渡朔、須田一政、立木義浩、内藤正敏、細江英公、森山大道、渡辺克巳の総勢9名の写真家による営為、そして彼らが見た、感じた東京をご紹介します。 これらの作家の作品は、全く一様ではありません。この多様性の中に、観客は、自分の考える東京を見るでしょうか? それとも全く知らなかった東京の顔を知ることとなるでしょうか?

この展覧会は、決して40年程前の過去を懐かしむような回顧的なものではなく、観客が目にする今、この瞬間を激しく照射し、それぞれの記憶と結びつき、我々のこれからを生きる意味を考えさせる一つの暗号として機能することでしょう。

長澤章生

Akio Nagasawa Publishing主宰。森山大道個人写真誌「記録」の他、主に写真集の出版を手掛ける。主な写真集は、森山大道「LABYRINTH」、細江英公「シモン 私風景」、須田一政「風姿花伝」(完全版)、中平卓馬「Documentary」他。2008年11月?2013年3月までBLD GALLERYのディレクターを務め、数多くの展覧会を企画する。